エリート社長の許嫁 ~甘くとろける愛の日々~
「あっ……」


アボカドサンドを頬張っていると、大きな窓の外に、見かけたことのある人の姿を見つけた。


「砂羽、どうしたの?」
「一ノ瀬さんだ……。ちょっとごめん」


私は奈央に断りを入れ、慌てて席を立った。
あれは絶対に、ブランピュールの一ノ瀬社長だ。

彼には、とにかく思い出してもらえるだけでいい。そこからが始まりだと思い、初めて会ったあの日から週に何度も手書きの手紙を書いて受付に預けている。

一枚ずつサンプルを入れ、その布地の特徴やアピールポイントを、毎回便箋にぎっしり。
ときには、峰岸織物の信念について書いたこともある。

もしかして迷惑かもしれないと心のどこかで思いながらも、窓口の稲田さんには電話すら取り次いでもらえなくなってしまい、他に方法がなくなってしまったからだ。

そして、受付の人に『もういりません』と言われることもないので、続けている。

一ノ瀬さんのところまで本当に届いているのかどうかはわからないけど。
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