エリート社長の許嫁 ~甘くとろける愛の日々~
とにかく、前回アポイントもなかったのにサンプルを受け取ってもらえたお礼が言いたい。


二階のカフェから階段を駆け下り、彼のあとを追いかける。

しかし、もうずっと先まで行ってしまっていた彼は、路肩に止めてあった黒い車のドアに手をかけている。


「一ノ瀬社長!」


私が声をかけると、彼は気づいて振り返ってくれた。


「あれ? たしかあなたは……」


もしかして覚えていてくれたの?


「はい。峰岸織物の峰岸です。先日はサンプルを受け取ってくださり、ありがとうございました」


お礼を口にして、頭を下げる。

なかなかうまくいかない毎日の中で、くじけそうなっていた私にとって、あの出来事は転機だった。

もしかしたら、見てもらえていないかもしれない。
それでも、コツコツと頑張り続ければ、なにかのきっかけはつかめるんだと思わせてくれたから。
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