エリート社長の許嫁 ~甘くとろける愛の日々~
「これ、商品を出すのは待って。私、マルグリットに行ってくる」
「えっ、どういうこと?」
「帰ってきたら話すから」


私は会社を飛び出した。

おそらく翔さんの予想は当たっている。
稲田さんはマルグリットにブランピュールの情報を持って転職したんだ。


マルグリットまでは電車を乗り継いで四十分ほど。
その間ももどかしくて落ち着かない。

翔さんに連絡すべきかとも思ったが、彼は彼で対処に駆け回っているはずだ。

それに、デザイン画を渡してしまったのは私。自分でなんとかしたいという気持ちが先走る。


数回訪れたことのあるマルグリットの本社は、十五階建ての立派なビル。
やはり門前払いで玄関までしか入ったことはない。

まずは受付に行き、大芝居を打つことにした。
なんのコネクションもない人間が突然やってきたところで、取り次いでもらえるわけがない。


「峰岸織物の峰岸と申します。実は稲田美奈絵(みなえ)さんに頼まれましたサンプルをお持ちしたのですが、所属部署をお聞きするのを忘れてしまいまして……」
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