赤ずきんと狼王子
 くじつきの肖像画はユリウス王子のものだけにつけられるものだ。
 そして新聞で当たりが発表され、みごと当たりを引いた女性は「一日デート引換券」がもらえる。
 その際に、ユリウス王子といつ、どこでデートするかが教えられるのだ。
 なんでも、プランはすべてユリウス王子が考えているものらしい。

 このくじつき肖像画というのも、ユリウス王子が「自分も女性を楽しませることに幸せを感じるから」とはじめたもの。
 だが、ひそかに「ユリウス王子は花嫁探しのためにもそうしているのではないか」という噂が立っている。

 ユリウス王子ももう結婚していてもおかしくない年頃だし、実際お見合いもいくつかしているらしい。
 だが、それだけでは花嫁探しとしてつまらない、とユリウス王子がこのようなくじつき肖像画を発案した、ともっぱらの噂だ。


「ローラ、やったじゃない! もし当たりだったら一日デートは確実よ! もしかしたら花嫁にもなれるかもしれないわよ!」

「む、むりだよそんな……花嫁までは」

「でも、可能性はゼロじゃなくなったのよ!」

「う、うん……まずは、当たりくじかどうかがわからないと、だけどね」

「当たりくじは今朝の新聞に載ってるはずよ! 一緒に買いに行きましょう!」

「うん!」


 マルグリットに手を引かれて、ローラもわくわくしてきた。

 いままで完全に手の届かない存在だと思っていた、憧れのユリウス王子。
 もしかしたら、彼に会えるかもしれないのだ。デートできるかもしれないのだ。そしてあわよくば花嫁に……!
 妄想だけでもかなり幸せな気分だ。
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