囚われの王子様。
「この前からほんと悪いな。彼女のフリなんかさせて」
「そんな、気にしないでください。こうやって、律儀にお礼までしてもらったんですから」
「じゃあ、望月さんも今日のことは気にしないで」
「…分かりました。もうこの件はチャラってことで」
私は須藤さんのために彼女のフリをして、須藤さんはお礼に灯油を買って運んでくれた。
これでお互い貸し借りなしだ。
それから須藤さんは玄関先まで灯油を運んでくれて、そのまま帰った。
「じゃあ、お疲れ」
「お疲れさまです。ありがとうございました」
「また会社で」
須藤さんは、最後に少し微笑みながら片手を上げで、踵を返した。
そんな後ろ姿は、社内の女子社員たちが『王子様』と持て囃すのも頷ける。
須藤さんは少し強引なところもあるけど、爽やかで良い人。
接したのはほんの少しだけだったけれど。
それだけは、分かった。
