そのアトリエは溺愛の檻
インターホンを鳴らしたのは冬樹さんで、私の姿は見えていないはず。この扉が開いたら、重秋はどんな顔をするだろうか。

「いらっしゃ……」

玄関で、目が合うと同時に重秋は固まった。

「百音、何その髪」

「あの、ちょっとした気分転換で」

「はぁ? なんだよ、それ」


表情が険しくて、後ずさりしたくなる。


「兄さん、俺もいるのわかってる?」

「冬樹、今お前に構ってる時間はないから雪乃の写真持ってとっとと帰れ」

「酷いな、その言い草。せっかく雨宮さんを連れて来たのに。とりあえず中に入れてよ」


冬樹さんは靴を脱ぎ、中に入っていく。


「こんな厄介な状況になったのは誰のせいだよ、まったく」と重秋は彼の背中に向かって呟いた。

二人のやりとりが謎だったけど、とりあえず私も中に入る。

部屋に着くと重秋はチェストから写真の束を取り出した。私が思わず「あっ」と口が開いた瞬間、冬樹さんにそれを手渡した。


「ほら、この前の写真」

「ありがとう」


見るつもりはないけど、パラパラとめくっているのが横から見えてしまった。間違いない、先週私が見た浴衣姿の水嶋雪乃の写真だ。
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