そのアトリエは溺愛の檻
「ったく、今回のことで借りはチャラだからな」

「わかってるよ。本当にごめんってば。俺がもっと早く行けたらよかったんだけど」

「本当だよ。弟の彼女と噂なんてごめんだ」

「えっ?」


二人の会話に口を挟む気はなかったけど、耳を疑う発言があったので、今回は声が出た。

「どうした百音」

「いえ、弟の彼女って」

「水嶋雪乃だよ。あいつは冬樹の幼馴染で彼女。ま、幼馴染だから俺も昔から知ってるけど」

重秋はそう言いながら冬樹さんを気遣うように見ていた。

「話してなかったんですか? 別に良かったのに」

「ええと……?」

重秋と冬樹さんを順番に見ると、冬樹さんが口を開いた。


「兄が雪乃と写真を撮られた日、本来雪乃は僕といるはずだったんです。でもどうしても外せない仕事が入ってしまって。雪乃も無理矢理作ったオフを無駄に過ごしたくないし温泉を楽しみにしていたと言ってきかないし。

流石に一人で過ごさせるには悪いから、1日半だけ兄さんに雪乃に付き添ってもらったですよ。専属フォトグラファーとして。二日目には僕が行きましたけど。あぁ、これ、到着した時の写真だ、ほら」


冬樹さんが出したのは、私が見た笑顔の写真だった。そしてその次に水嶋雪乃が冬樹さんに抱きついている写真がある。
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