そのアトリエは溺愛の檻
来年は創業50周年だから社長が熱くなっている。万が一、カレンダーにアキの写真を使う話がダメになってしまったら、会社で気まずいどころの話ではない。
更に、この写真のことを誰かに知られてしまったら、私とアキがそういう関係になって揉めて結果的にカレンダーの話がなくなったと噂になるかもしれない。

倉橋は地方の中小企業にしては待遇がいい。有給休暇もきちんと取れるように決まっているし繁忙期を除けば残業も少なくて働きやすい。できることならこのまま働き続けたい。


「それは、脅迫ですか?」

「そんな物騒な。あくまで推測だ。実際どうなるかはわからない」

目が笑ってない。それなのに口元は笑っている。


「ただ、俺は強く望んでいる。それだけのこと」


これは、もはや逃げ場がない。
そもそも勢いで寝てしまった自分が悪いのだ。もう腹をくくるしかない。


「あの、撮った写真は本当にどこかに公開することはないんですよね」

「あぁ、それは約束する。人に見せるための写真じゃないんだ。それにここには他のスタッフも来ないし、撮影の存在を知る人間は他にいない」
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