そのアトリエは溺愛の檻
だけど彼はまだ撮影の話をした。すぐに用無しだと言うのは可哀想だと思ったのか、軽い遊び相手をキープしておきたいのか、どちらにしても惨めな話だ。


「だからね、もうモデルにしたいって言われないように髪を切ったの。長い髪がイメージにぴったりって言ってたから、これならもう違うでしょ。あ、お代わり注文するね。賢木くんも同じでいい?」

賢木くんは少し呆れたようにため息をつき、頷く。


「あ、でもね、仕事はちゃんと最後までやるよ。誰かに迷惑かけるとかじゃなくて、自分がやりたいの。サンプルを見せてもらったらすごく綺麗で、こんな仕事に関わってるってことが嬉しかった。だから、仕事は最後までやり遂げる」

「どこまでも痛々しくてなんて言っていいかわからない」

「ひどいな、それ」


でもこんな話聞かされても賢木くんも困ると思う。本当に申し訳ない。


「あのさ、ぶっちゃけ聞くけど、最初以外もなんかあっただろ」

「えっ」

「去年のこと以来、男を疑ってた雨宮が、撮影中の優しい言葉くらいで勘違いするとは思えない。直接的なことがあったんだろ。言っとくけど、これは奥田さんも同じこと思ってたからな」
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