王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~

「惚れ薬はきっかけづくりのようなものよ。だから使うときは気をつけなさい。薬を飲ませただけで心が手に入るわけじゃないし、使い続けると相手の命を危険にさらすわ」

「もし……もしよ? 使い続けたらどうなるの?」


聞き返せば、ベティは神妙な顔をする。


「惚れ薬は相手の記憶を勝手にいじってしまうのよ。だから飲まされた人間にひどく負担がかかるの。ストレス耐性を超えれば、人格が破壊されるわ。死んだのと一緒よ。だから使うとしても、一度だけになさい」

「そんな……」


エマの手が震えてくる。
シャーリーンは惚れ薬を使っただろう。一度だけならいい。エマの忠告を聞いて、一度でやめてくれるなら。

だけどセオドアの言動が気になる。
いつもと違ってぼうっとすることが多いというギル。もしシャーリーンが繰り返し使っていたなら?


「……母さん、どうしよう」


エマは祈るように拳を握りしめた。ベティはエマのただならぬ様子に、眉根を寄せ声を尖らせた。


「もしかして、もう何度も与えてしまったの?」

「分からないの。薬瓶ごと持って行かれてしまったのよ。どうしよう。ギルに何かあったら私……」


彼がこの世界からいなくなる。
もしそうでも、エマの世界は変わらない。どちらにせよ、彼にはもう会えないのだから。

それでも、彼がいないと思ったら世界は暗黒に満たされるようだ。自分を選んでくれなくてもいい。彼には元気でいて欲しかった。


「瓶ごと? 何やってるのよ。あんたじゃない人が使ってるってこと?」

「お願い。母さん。私、どうしたらいい? 教えて!」

「どうもこうも……まずは状況を説明しなさいよ」


ベティに促され、エマは城で起きた一連の出来事を、順序だてて説明した。

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