王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
(そうか。私をちゃんと見てくれてる人は、私を怖がらないんだ)
肩書でも身分でもない。エマ本人を見て、信じられる人間だと思ってくれた。
そんな人がギル以外にも多くいる。その事実は、エマを心の底から勇気づけてくれた。
「……大好きよ、ギル」
満面の笑みを見せたギルは、再び優しくエマの頬にキスをする。
この時間だけで何度キスをされたのか数えきれないくらいだ。
「あーやばいな」
ポツリとつぶやき、ギルバートは体勢を変える。ベッドに座り、壁に背をつけ、エマを後ろから覆うように抱きなおす。
「やばいって何が?」
「いや。俺は今まであんまり女性には興味なかったんだけどな。……エマといると触りたくなって困る」
「触るって、……え?」
真っ赤になるエマを後ろからぎゅっと抱き締める。肩にギルバートの顎がのり、密着具合にエマは心臓が飛び出しそうだ。
「そんなに怯えないでよ。エマの嫌がることはしないって。今日はここまで」
「ギル」
「エマをちゃんと救い出すから、待ってて」
そう言うと、ギルバートは彼女をなだめるようにぽんぽんと一定のリズムで彼女の腕を優しく叩いた。
ドキドキしていたはずなのに、緩やかなリズムに徐々に眠りの世界へ引き込まれる。