王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~
「バーム、お帰り」
「ただいま。すっごく疲れたよ。お水ちょうだい」
「ええ、中に入りましょう」
エマはバームを肩に乗せ、店の中に入る。
「みゃーん」
足元をこげ茶の猫が通っていく。この猫の名はメアリ。母・ベティの使い魔の猫だ。
「おいしそうな子が帰って来たね、だって。メアリはいつか僕を食べる気なんじゃない?」
「まさか。使い魔の仲間を食べるわけないでしょう?」
魔女や魔法使いと使い魔との間には契約関係がある。お互いに通じ合うなにかがないと、契約にまでは至らないのだ。そのため、人によって変わった動物を使い魔にすることもある。
最たるものは父親であるジョンの使い魔で、モグラだ。もともとハーブづくりが趣味だったジョンの傍に自然に寄ってきて、契約を交わしたのだという。
ジュリアの使い魔はスタンダートで、母親と同じく猫だ。
エマのような鳥の使い魔を持つ魔女はいないわけではないが、その場合、鳥の種類はフクロウのような夜行性のものが多い。マグパイのような巷に溢れている鳥がなることは珍しく、伝達に便利なため重宝されている。
エマは家の中に入り、バームにレモンバームを浮かせた水を与える。
「元気が出るわよ。あなたの名前のハーブ水よ」
「ああうまい」
小鳥は何度もお皿に嘴を突っ込み、水を飲む。そしてようやく落ち着いた時、嘴を体に突っ込んで一本羽を抜き出した。それは彼の羽の色――白、黒、青のどれでもなく、銀色にキラキラと光っていた。