20代最後の夜は、あなたと
こ、これって、いわゆるプロポーズだよね?


人生初のプロポーズに、私は動揺しまくってた。


「4月から札幌で心機一転がんばるから、ついてきてほしい。


すぐに返事しろとは言わねーから、ゆっくり考えて、な?」


照れ隠しなのか、私の頭を軽くたたいた。


「うん、わかった、ちゃんと考える」


「いい返事しか待ってねーからな」


それから、転職先の会社の話をしてくれた。


業務用厨房機器メーカーだから、今の仕事と似かよったところは多いこと。


収入はプラスになるし、福利厚生も充実してること。


私に心配させないように、なんでも話してくれてるって思った。


伊勢くんなら、新天地でやっていけるんだろう。


でも、さすがに、私の椅子は用意されてないだろうし。


どうしたらいいんだろう。


一人じゃとても決められない。


けど、自分のこれからに関わることだし、決めなきゃいけない。


お互いの人生の転機なのは、確かだから。


バーを出て部屋に戻ったら、テーブルにワインクーラーで冷やされたボトルが置いてあった。


「これ、伊勢くんが用意してくれたの?」


「プロポーズだからな、ちょっとぐらい演出も必要だろ」


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