20代最後の夜は、あなたと
「じゃ、今日はこのくらいで終わろう」


「お疲れさまでした」


「おう、お疲れ」


伊勢くんと私だけ、会議室から出た。


「帰ろっか」


「あ、ごめん、俺ちょっと用事あって」


「でも、昨日のバッグ持って帰りたいから、用事につきあうよ」


帰省した時のキャリーバッグは、伊勢くんちに置いたままだった。


「ごめん、そうだったよな・・・用事は明日にするよ。


一緒に帰ろう」


「ありがと」


なんか、変だ。


今朝の伊勢くんとは、別人みたいだ。


会社で何か言われたのかな。


駅に向かう時も、無言のまま隣を歩いていた。


伊勢くんちの最寄り駅に着いても、いつもなら手をつないでくれるのに、ふれもしなかった。


部屋の鍵を開けて、私が靴を脱ぐ間もなく、


「じゃ、気をつけてな」


追い出すように背中を向けた。


「伊勢くん、どうしたの?」


やっぱりおかしいよ。


確かにキャリーバッグは玄関にあるけど。


いつもなら、せめて駅まで送ってくれるのに。


なんで、急に冷たくなるの?


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