35階から落ちてきた恋
私は首を横に振った。

「そういうのって自分で言わなきゃいけないことですよね」

「そうね。逃げないで果菜ちゃんから伝えないと。こういう事って言える時にきちんと言っておいた方がいいと思うわ。それにね、果菜ちゃんも貴斗の気持ちも分かった方がいいと思うのよね」

「進藤さんの気持ちですか?」

「そう。ホントは何考えてるかなんて聞いてみないとわからないじゃない。さっき聞いたのは果菜ちゃんの想像の中の貴斗の気持ちであって、それがホントに貴斗の気持ちかどうかは貴斗にしかわからない」

でしょ?っと首をかわいらしく傾けて清美さんは微笑む。

「私が勝手に進藤さんの気持ちを想像してるだけ?」

「そうかもしれないし、そうでないかもしれない。
私から見たら違う世界に住んでいた2人が簡単に自分たちの背後にあるものまで分かり合えるはずないでしょ。お互いの思いを伝え合わなくてすれ違ってるように見えるわ。
とにかく、このままじゃダメよ。果菜ちゃんはネットとか見聞きしないようにしているんでしょ?」

「そうですね。もともとあまり見てませんけど、今は何を書かれてるか知るのが怖いから余計に情報を遮断してるって感じです」

「果菜ちゃんは怖くなっちゃったのよね。今まで頑張りすぎたから」

わかってるわよとでもいうようにうんうんと頷いて私の背中をさすりはじめる。

頑張りすぎた?
そう?頑張りすぎたのかな?
泣いて重くなった瞼を懸命に見開いて清美さんの顔を見る。

「頑張ってたわよ。びっくりするほどにね」
< 172 / 198 >

この作品をシェア

pagetop