35階から落ちてきた恋
「でも、また会うんでしょ?」

「まあ、お誘いがあれば・・・ですけど」

「また会おうとか言われた?連絡先の交換とかしたんでしょ?」

「一応は…」

「じゃ、やっぱり今後進展があるかもってことね!」
美知子さんの目が再びきらきらと輝き始める。

だからそれは…と言おうとしてやめた。
これ以上の話はしない方がいいと思った。美知子さんがLARGOファンならなおさら。
タカトのプライベートを話すのはよくない。


「お邪魔しまーす」
ふすまが開いて知世ちゃんをはじめクリニックのスタッフの面々が入ってきた。

今からまた吊し上げにされるのかと思うとゾッとする。

「詳しくは美知子さんに聞いて」
がばっと立ち上がってダッシュで靴を履き鈴庵のお座敷から逃げ出した。

「ああっ、果菜さんっ!」

ちょっと待って下さいという声が背後から聞こえるけれど、私はゴメンだ。
後は美知子さんに任せてしまおう。
彼女なら私にマイナスになるようなことは言わないはずだし。

鈴庵を出てから近所のカフェでテイクアウトコーヒーを買って目の前の公園のベンチに座る。

疲れた。
昨日クリニックに新藤さんが顔を出しただけでこの騒ぎ。

でも、当たり前か。
芸能人。
人気バンドのイケメンギタリスト。
そんな人が身近に現れたとなれば誰だって。

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