Lingerie




『あ、ヤベッ、』

そう微々たる焦りを感じた時には彼女の姿はこちらに向けて歩み進めていて。

どういう意図や目的でも接近か分からぬ心持は久しぶりに焦りに満ちていた。

今のは完全に自分の失態だ。

『失礼です』なんて文句を言われても仕方のない場面だよな。と、彼女が近づき切る前にそれなりに構えて準備をしていた直後だ。

カツンと目の前で止まるヒール音。

それに落ち着いて対峙して視界の悪い顔を彼女に向けると。

「ありがとうございました」

「……は?」

俺が顔を上げると入れ替わり、真っ先に自分の視界に収めたのは綺麗な角度で頭を下げる彼女の姿。

さすがにこの展開は予想外で構えの皆無。

間抜けにも呆けて見つめていれば、スッと体を起こした彼女が、

「ポスター案、また採用していただけたようでありがとうございます」

「あ……ああ、ポスター案…か」

「何か不備なところはありませんでしたか?ご要望あれば修正しますが」

「いや……あのままでいい…です」

本当に特別不満に思うところはなかった。

むしろ満足の行く、他の物と迷いどころすらなく抜きんでた完成度だった。

不必要な心配だと切り返せば「そうですか」と愛想笑いもせず納得する彼女。


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