Lingerie




それに特別不愉快に思う感情はない。

彼女はこれが普通のスタイルでこれが彼女という素直な姿なんだろう。

でも、確かに一般的には好かれるタイプの在り方ではないな。

なんとなく、イズミの言っていた「可愛くなくて可愛い」という感覚が分かる気がする。

そんな事をチラリと頭に過らせている最中。

「…新しいデザインですか?」

「あ、まあ、」

俺の描きかけのデザインを捉えての彼女の問い。

それに肯定を響かせ自分でも自分のデザイン画に視線を走らせ、そうして再び彼女へと視線を戻す。

そんな刹那だ、

「……九条さんのデザイン、下着を下着に感じさせないから好きです」

「……はっ?」

「厭らしいんじゃなくてセクシーで綺麗、なのに品や愛らしさもあって……下着というより…自分だけの特別着みたい」

「………」

「いっつも、そう思って下着って概念飛びながら広告案作ってるので……イメージに合わなかったら遠慮なく言ってくださいね」

淡々と弾かれる声音は愛想やおべっかのようなものはない。

自分の印象を良くしようと微笑むでもなく、むしろ俺の方へとその視線は向いていなかった。

ひたすらに俺のデザイン画を見下ろしての感想の吐露。

それを告げた後も自分に残されるのは事務的な会釈。

すぐにカツリカツリとヒールの音が遠ざかって、そのまま彼女の気配はこのフロアからも去っていく。

意識が勝手に追っていた彼女の気配が完全に消えた。

その瞬間にストンと自分の中に落ちてきた結論と感情。

「………マズイ、」



落ちた……。



3番目に惚れたのは……彼女そのもの。


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