Lingerie~after story~
安心した。と言いたげに失笑し、そっと寄せられ合わされた額同士。
この九条くんの優しい笑顔も好きだな。
気を抜けばまたそんな一言を発してしまいそうであった自分の口を、意識して閉ざしたのはさっきの九条くんの牽制があったからだ。
ゆっくりと溜めこんだ熱を空気に溶かしている様な時間。
もどかしくも、心地よくもある。
「………本当、一体何があったの?今日の寧々さん」
「……雨に……降られた」
「えっ?」
「……不思議よね。……雨って苦手だったの。雨の日は外に出れなかったから」
子供の頃から、雨が降ると逃げ場がなかった。
する事と言えば家の中で様々なお稽古事ばかりで。
年々、何の為に上達を目指せばいいのか分からず、ただ鬱々と認められない技術を磨き降り注ぐ雨を恨みがましく見つめていた記憶がある。
雨は……私を拘束する牢獄の様だった。
でも……違うと…感じた。
あの人の……おかげ。
「寧々さん?」
遠い過去と近い過去と、色々な記憶の回想に浸っている間に現実に意識がお留守であったらしい。
それを引き戻す様に響いた優しい呼びかけに、静かに焦点を合わせれば自然と口の端が上がってしまった。