愛人契約
そんなこの場しのぎの言葉でも、私は嬉しかった。

でも、この手を放したのは、私だ。


「放して下さい。」

「放さないって、言ったろ。」

本田さんは、本当に放してくれる気がないみたいで、もっときつく抱きしめてくれた。

「言いましたよね。あなたが大事にしている女性の、私は娘だって。」

「だから?」

甘い声が、私の耳元でざわつく。

「関係ないよ。あの女とは、当に終わっているんだ。」


それでも、納得いかない。

私には。

母親が知らぬ顔で、あの家に来た事が。


「信用できない。」

「なぜ?」

ここまで来ると、自分が悲劇のヒロインぶって、嫌になる。

「……他の女にも、同じような事を言っていた。」


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