愛人契約
本田さんは私の腰に手を当てて、引き寄せてくれた。

偶然に、本田さんの胸板が、私の胸に当たる。

ドキッとした。

本田さんの胸板、見た目では分からないけれど、程よく筋肉がついていて、心地いい。


「さあ、いいよ。」

背中を押され、エレベーターの中に乗った。

本田さんはエレベーターの中でも、隣に立って、他のお客さんから私を守ってくれた。

ああ、どうしよう。

好きになってしまったら……

私は静かに、本田さんの顔を見つめた。


流れるような前髪。

長い睫毛。

切れ長の目。

鼻筋の通った、高い鼻。

柔らかそうな唇。

どれをとっても、私の目を奪うモノだった。


「着いたよ。」
< 19 / 123 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop