血まみれ椿姫
一体いつの間に部屋に入ってきたんだろう。


人が出入りした気配なんて全く気が付かなかった。


「椿のように散って死ね」


トモキの口からその言葉が発せられ、俺は目を見開いた。


「どうしてそれを知ってる……!?」


その言葉を知っているのはあの現場にいた人だけだ。


トモキは一度だってあの現場にいたことはない。


トモキはおかしそうに笑い声を上げた。


それは普段のトモキの声ではなく、小さな女の子のような笑い声だ。


俺は後ずさりをしてトモキと距離を置いた。


と、その時だった。


トモキの右手に何かが見えた。


「それ……何を持ってるんだ?」


トモキの右手にぶら下がるようにして持たれているあれは……生首!?


そう理解した瞬間、トモキがそれを俺に向かって投げてきたのだ。


咄嗟にそれをキャッチする。


古家先輩!!


目を見開き、口からだらしなく舌を出して絶命している古家先輩が、そこにいた。
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