花と蝶
それから眠ることができなかった。朝日が差し込む頃になり、朴尚宮がやって来た。
「正嬪媽媽、今日は中宮殿に参る日です」
「そう…支度を手伝って」
「はい」
正嬪は鏡台の前まで行くと用意されたお湯と絹で顔と首筋を拭いた。
その直後に内人らがやって来て化粧を施した。
髪を結われ、嬪御の最高位を示すかのような鳳凰の簪を挿した。
尹秀玉から正嬪に変わった。
おもむろに立ち上がり、桜色のチョゴリに蘭色のチマを纏う。そうして扉を開けた。内人や尚宮らが頭を下げる。そっと朴尚宮が耳打ちした。
「中殿媽媽は気性が激しい方です…」
「わかっているわ。誰も私など歓迎していない」
そう返すと正嬪は階段を降りて中宮殿へと向かった。
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