花と蝶
「こなたは淑嬪になれたけど劉尚宮は尚宮のまま。おまけに僖嬪がいるから中々、後宮になりずらいの」
「そうでしたか…劉尚宮はどちらの殿閣に?」
「春禧殿の西配殿よ」
「会いに行ってきます」
「肩入れしているように振舞ってはだめよ?中殿媽媽、僖嬪に睨まれてしまう」
「忠告ありがとうございます」
正嬪は立ち上がると淑嬪に一礼をして部屋をあとにした。淑嬪が言っていた春禧殿は今は空の大妃殿の裏にある。西配殿は上級尚宮の住居に当てられる。
朴尚宮に案内されて春禧殿に向かうと質素な身なりの女人が空を眺めていた。
その瞳には光はなく無気力だった。
「劉尚宮?」
正嬪が声をかけると女人はこちらに光のない瞳を向けた。
「どちらの淑儀媽媽ですか?それとも貴人媽媽ですか?」
「こなたは正嬪よ。あなたは劉尚宮?」
「はい。正嬪媽媽にご挨拶いたします」
劉尚宮は深々と丁寧に一礼をする。その表情に色はなかった。
「いくら隅に追いやられても正嬪媽媽の話を耳にします」
「こなたは有名人ね」
「ところでこのような場所にどんなご用件ですか?内人すらいないので茶すら出せません」
「私は客人ではないわ。あたなを嘆きに来たわけでもないの」
「嘆く?私の身の上など…空蝉です。正嬪媽媽にどのように思われても構いません。ただ、ここを早く去った方が良いです」
「中殿媽媽や僖嬪媽媽の目を気にしているの?」
「はい」
「そう…では、また来るわ」
正嬪は踵を返した。金の刺繍が入ったチマが風に靡いていた。
「そうでしたか…劉尚宮はどちらの殿閣に?」
「春禧殿の西配殿よ」
「会いに行ってきます」
「肩入れしているように振舞ってはだめよ?中殿媽媽、僖嬪に睨まれてしまう」
「忠告ありがとうございます」
正嬪は立ち上がると淑嬪に一礼をして部屋をあとにした。淑嬪が言っていた春禧殿は今は空の大妃殿の裏にある。西配殿は上級尚宮の住居に当てられる。
朴尚宮に案内されて春禧殿に向かうと質素な身なりの女人が空を眺めていた。
その瞳には光はなく無気力だった。
「劉尚宮?」
正嬪が声をかけると女人はこちらに光のない瞳を向けた。
「どちらの淑儀媽媽ですか?それとも貴人媽媽ですか?」
「こなたは正嬪よ。あなたは劉尚宮?」
「はい。正嬪媽媽にご挨拶いたします」
劉尚宮は深々と丁寧に一礼をする。その表情に色はなかった。
「いくら隅に追いやられても正嬪媽媽の話を耳にします」
「こなたは有名人ね」
「ところでこのような場所にどんなご用件ですか?内人すらいないので茶すら出せません」
「私は客人ではないわ。あたなを嘆きに来たわけでもないの」
「嘆く?私の身の上など…空蝉です。正嬪媽媽にどのように思われても構いません。ただ、ここを早く去った方が良いです」
「中殿媽媽や僖嬪媽媽の目を気にしているの?」
「はい」
「そう…では、また来るわ」
正嬪は踵を返した。金の刺繍が入ったチマが風に靡いていた。