蜜月同棲~24時間独占されています~
整った綺麗な鼻筋、彫りの深い目元。
長い睫毛。


薄く開いた唇から微かな寝息が聞こえる。
昨日はこの唇が、私の顔や耳や首筋の、あちこちに触れた。
そして私の名前を呼んで、好きだと言ってくれた。


やっぱり今も、夢みたいだと思ってしまう。
もしもこうして抱きしめられて眠っていなければ、本当に夢の出来事だったと朝起きたら思っていたかもしれない。


綺麗な形の唇を見つめていれば、昨夜の感触にどうしても触れたくなって手を伸ばす。
指先に吐息が触れるくらいのギリギリの場所で迷っていれば。


「……ゆず」

「……え?」


唇が動いた。
ぱっと目線を上げれば、克己くんの目が開いて黒い瞳にしっかりと私が映っていて。


「あっ……お、おはよ」


悪戯が見つかった子供のように、慌てて目を逸らし手を引込めようとしたけれど、その行動は読まれていたようですぐに手首を捕まえられた。


そのままころんと真上を向かされ、気が付けば彼が私に覆い被さっている。

真黒の瞳は寝起きのそれではなく。


「起きてたのっ……」

「アラームの音で。ゆずがどうするかなって待ってた」


寝顔を見つめてたのも、唇に触れようとしてたのも、全部知られてた。
そう思うと恥ずかしさに顔が火照って、克己くんを恨めしく睨んだが、彼は嬉しそうだった。


「いつ触れてくれるか待ってたけど、待ちきれなくなった」


ちゅ、ちゅ、と唇以外の場所にキスをして、それから私の額からゆっくりと髪をかき上げ頭を囲う。


「おはよう、ゆず」


朝っぱらから、甘ったるい。
彼が夕べ決めたらしい私の愛称は、子供のころによく母や姉に呼ばれたものと同じだったが、彼に呼ばれるというだけで酷く印象が違った。


幼名の懐かしさじゃない、甘く優しく、蕩けるような響きに聞こえる。


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