蜜月同棲~24時間独占されています~
幸せだ。
本当に、夢みたいだ。


はっきりと気持ちを言葉にしてくれた、後は私が自分の気持ちをちゃんと打ち明けるだけ。
ただ、両想いだと思えたそこがハッピーエンドのゴールではないと知ってしまったから、まだ少し、一歩進むのが怖いだけ。


だけど、待っていてくれると言った。
私の心がきちんと向き合えるまで待っていてくれる。


本当に大事に考えてくれているのだと、実感できるほど頬が緩んでしまう。
ただひとつだけ、聞きそびれてしまったことがあった。


……気になる人は、もういいのかな?


忘れていたわけではないけれど、聞くのが怖くて躊躇してしまったのだ。


「……ちゃんと、聞こう」


きっと、それほど大したことじゃなかったのかもしれない。


焦らなくていいのだと言ってくれたのだ。
自分の心の準備が出来たらちゃんと聞いて、そして私の気持ちも伝えようと心に決めた。


キッチンに戻り、流し台に浸かっている食器をひとつひとつ水で洗いながら、備え付けの食洗器の中に入れていく。
こんな風に、今の幸福感が過去の痛みも洗い流して、ひとつひとつことを進めていく。


過去の恋を忘れるのには、新しい恋が一番。
そんなどこかで聞いたことのあるフレーズの意味は、こういうことかと実感していた。

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