蜜月同棲~24時間独占されています~

煮魚とほうれん草の白和え、野菜のそぼろあんかけと、お味噌汁。
火を止めたお鍋の中に溶かした味噌を流しいれて、出来上がったところで、玄関から音がした。


暫くすると、スーツ姿の克己くんがリビングに入ってくるのが見え。


「おかえりなさい! ご飯出来てるよ」


そう声をかけると、ネクタイを緩めながらキッチンへ入ってきた。


「ただいま。すげー、良い匂い」

「もうすぐ帰るって連絡くれてたから、合わせて準備できて助かったの。ありがとう」


大きめのトレーには、既にカレイの煮つけの皿と野菜のそぼろあんかけの小鉢が乗せてある。


「柚香って、何気に料理すごいよな……」


料理の皿を感心した様子で見降ろして、克己くんが言う。
私はほうれん草の白和えをボウルから小鉢に盛り付けながら、ちょっと得意げになった。


「別に、レシピの通りに作ってるだけだよ」

「でも結構手際もいいだろ。見てたらわかるよ作り慣れてるの」

「まあ、修行もしたし……それにもともと、結構好きだし」


修行というのはまあ、花嫁修業だけれど。
余計なことを言って心配をかけてしまったかな、と気が付いて、笑って話を逸らした。


「克己くん、これちょっと味見して」


私は甘めの味付けが好きなんだけど、克己くんの好みはまだ把握しきれてないので砂糖は少な目にしておいた。
白和えのボウルと菜箸を差し出すと、彼はちょっと笑って腰を屈める。


「いいよ」


といって、私のすぐそばで口を開けた。
つまり、俗に言う『あーん』というやつだ。

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