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「”わたしなんか”って自分を蔑む様な事、君には何もないでしょう」

「(……怒ってるわけじゃなかったんだ。ハル先輩は私が自分のことを、蔑んでると思っていたんだ。)」


そう安堵するのと同時に、ハル先輩の言葉が深くわたしの中に刺さった。

だけど、わたしは自分を卑下しているから”わたしなんか”という言葉を使っているわけではない。

昔から自己評価が低い自覚はあった。

だけどそれは、”謙虚”とも違う全くの別物だ。

この世界は、二つのタイプの人間がいるとわたしは思う。

それはシンプルに”強者”と”弱者”。

ただそれだけ。

人によって呼び方が違うと言うだけの話。


搾取する側と搾取される側。
評価する側と評価される側。
指図する側と指図される側。


人は集団になれば必ずカーストが生まれる。

誰だって自分が底辺の存在などにはなりたくないと当然考えるからだ。

ほとんどの人がカースト上位勢にはへらへらと媚びへつらい、そうではない相手は見下し、自分よりも劣る存在というレッテルを貼りたがる。

だから”わたしなんか”と言う言葉を使うくらいで、それを聞いた人たちが勝手に自分の方が優位に立っていると思う人間が多いことも知っている。

そんな人達に”わたしなんか”と口にすると、彼らは自然とわたしから敵意を反らしてくれる。


——だって人は特別な存在を忌み嫌うものだから。

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