あ、あ、あ愛してる「君に伝えたい思いをこめて」
川元の細々として震える歌声が俺の声に重なる。

「自信を持って、音は正確だから」

花音が川元に笑顔を向ける。

川元は頷いて、俺の声と競うように歌い出す。

「Aliceの声をよく聞いて。合唱は競い合って歌うのではないの」

川元の歌は確かに上手い。

俺以上かもしれないと思う。

上手いが故に、知らず知らずに自己主張する。

自分よりも劣る歌声に合わせるという感覚が、掴めてないのかもしれない。

俺の頭に速水さんが「拓斗と奏汰の腕でも、向こうで本格的に学んだお前の実力には追いつかない」と言った抑揚を抑えた無感情な声が、浮かんでは消えた。

ニューヨークでSoleilの弟トニーがサーカスみたいな運弓(ボーイング)に編曲し、姉エマがたびたび苛ついていた。

上手い奴は、自分が当たり前にできることを他人も当然できると思っている。
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