駆け引きは危険で甘く、そしてせつなくて

隣で眠る愛しい女の気配に少しずつ目が覚めてくると、目の前には涙を拭う彼女がいた。


その涙の理由は何だろう?


彼女は俺が『愛を信じない男』だと思っているから辛そうな表情をしているのだろうか?


確かに彼女に出会うまではそうだった。俺に近寄ってくる女達の愛の言葉は薄っぺらく、俺自身を見ようともしない。女なんて自分の肩書きしか見ていないと気づいてからは恋なんて諦めていたのに、上司と部下の関係を徹底的に崩さない彼女に惹かれていた。だが、踏み出す勇気が出てこないまま、次第に彼女も他の女達と同じはずだと思えてきて、疑心暗鬼のループにはまっていく。


本性を暴いてやろうと2人きりのエレベーター内で、あの手この手で誘い出せば、頬を染めながらも彼女の態度は変わらなず冷たくあしらう姿、ツンデレと言うヤツに目的も忘れ恋に堕ちていた。


彼女に近づく男達が次々と変わる様子に、告白するには勇気が必要だった。気のある素ぶりで揺さぶりながらも怖じけてしまい、振られても冗談ですませれるように『後腐れのない女を探していた』なんて嘘をついていた。


そう言わなければ、彼女はこの腕の中にいなかったはずだ。


「りいさ、おはよう」


後悔なんてさせないさ…
俺は、彼女の涙に気がつかないふりをした。

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