父の遺した日記

裕太side

「裕太、お母さんお葬式に行くから。」
家のことできないけどごめんね、
朝から暗い顔をした母が言った。俺が行かなくてもいいってことは母の知り合いだろう。
「そう。わかった、何時に帰ってくる?」
「明日の夜かな。東京まで行くのよ。」
「、、、遠いね。そうなんだ。いってきます。」

宮城から東京か。遠いな。朝からそんな会話をしたせいか、少しどんよりした気分だ。

学校が終わって、家に帰れば当然母の姿はなく、夜ご飯どうしようかなとそんなことを考えて冷蔵庫を開けた。うちは共働きだから、よく自分で作る。冷蔵庫の中をみて、面倒くささからカレーに決定。
「カレー粉は、、、あったあった〜。」

ガチャ

「あれ、母さんは?」
ドアを開けたのは兄だった。
「お葬式だって。」
「今日だったんだ。」
「兄ちゃん聞いてなかったの?」
「うん、電話とったの俺だったし、家族みんなで行くと思ったから。」
「え、なんで。母さんの友達でしょ?」
「いや、叔父さんでしょ。聞いてないの?」
え、、、叔父さん?
兄ちゃんが言うには、紗江子さんのご兄弟が亡くなったと葬儀の管理者から電話があったらしい。
紗江子とは母さんの名前だ。
「俺たちは呼ばれなかったんだなぁ。俺車椅子だし。」
あぁ、なるほど。遠かったし。

ブーッブーッ

『もしもし。裕太?ご飯食べてる?』
『うん。それよりさ、今日って誰のお葬式なの?』
『えぇ、、と。お母さんの同級生よ。』
『え。、、、そう。』

あれ?

「兄ちゃん、母さんの同級生の葬式だったよ。」
「あれー?でもそう言ってたような。聞き間違え、というか夢かなぁ。」

そうだよ、きっと。兄ちゃんの夢だ。
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