月が綺麗ですね
不安と恐怖の中にいる私に届いた言葉にはっとして閉じていた瞼を開くと、彼に視線を戻した。


鋭い瞳が私を見つめている。


「どんな気分なんだ?」

「イヤ...凄くイヤ。辛いし...苦しい」


今にも泣きそうな瞳を彼に向けた。


「俺はお前を秘書室に異動させるのに、一年悩んだと言ったことを憶えているか?」

「...はい」

「俺にとって大切な存在のお前に、果たして俺がそんな酷いことをするだろうか?むしろお前は俺のことをそんな風にしか思っていなかったのなら残念だ」


あっ...。


ふっと手首から力が抜けたかと思うと、副社長は体を起こした。
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