月が綺麗ですね
──屋上の風は強かったけれど、もう冷たさはない。季節は完全に春になっていた。柔らかい陽射しと、花の香り。

冬が終わり、春はウキウキする季節...なのだけれど。

私は流れる雲を見上げてため息をつく。


「進藤ちゃんこっち」



北林さんは時々ここへタバコを吸いに来るのか、風の弱いところをよく知っていた。フェンスに寄りかかると、タバコに火をつける。


「ふーっ」

「北林さんがタバコ吸うの知りませんでした」

「やっぱりイライラするじゃない」


彼女は持っていた携帯用の灰皿にタバコの灰を落とす。


「そうですね。私もタバコ吸おうかな」

「やめときなさい。あんたはそんなキャラじゃないんだから」

「キャラとかタバコ吸うのに関係あります?」


自分で言っておきながら「さあ?」と北林さんは肩をすくめながら笑った。
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