シンさんは愛妻家
ノックの音がして部下の八木(やぎ。5年目。)医師が部長室に入ってくる。
この部屋は2階の部長室の並びにあって日当たりが良く明るい部屋だ。

以前副部長として勤めていた頃は地下のMRI室の隣の読影室が僕の城だった。
オンナノコが吸い込まれていく『ブラックホール』と呼ばれていたらしいけど…
別に次々女の子を取って食うような事はしていないから、心外だったけれど、
まあ、特定の恋人を持たない主義の僕の需要が結構あったという事だろう。
面倒な事が嫌いな僕には
同じように面倒を嫌う数人のセックスフレンドが常にいた。というだけだと思う。
まあ、本気で好きになった女の子には振られてしまったんだけどね。


「部長、今日の初診の治療計画を立てる予定の患者さんなんですけど…
迷うことがあって…
少し相談に乗ってもらえますか…」と部屋に入ってくる。

ここの放射線科の医師は4名で、
いつもは相談役の副部長の榊医師が当直明けでいなくなったので、
僕に相談に来るようになっているのだ。

レントゲン用のパソコン画面のスクリーンに患者のMRIとCTの画面を映し、
照射部位の検討をする。

「うん。結構、浸潤してるね」と僕も顔をしかめて、画面を見つめる。




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