シンさんは愛妻家
3月に入って、風も暖かくなって、

イブキの就職先は決まっていないけど、

なんとか医療事務のテストには合格した。



でも…

イブキの引っ越し先を探すのは

いつまでも口にできずに、

ずっとこのまま、ここにイブキがいてもいいんじゃないかって…


僕は心の中で思っている。



僕とイブキは一緒に春の服を買いに行ったりし


春のお花見に一緒にいこうと話したりして

いつものように過ごしていたのに



突然終わりがやって来た。



3月の終わり、

先に帰っているはずのイブキが

部屋にいなかった。

タビィも

タビィのキャリーも

最初に運んできた男の子の服も


僕が買った服はそのままに

ベッドの上にはタビィのぬいぐるみだけ置いてあって、シマシマの猫のぬいぐるみはいなかった。

うん。

出て行ったんだ。


僕は茫然とベッドの上に座り込んでぬいぐるみのタビィを撫でた。


そっか。

もう、飽きられたか


思ったより早かったけど


その分だけ

僕の傷は浅かっただろうか?


昨日も

明日の夕飯はなににする?

って笑い合ったのに…

どうして


僕が本当に欲しいものは

僕の手からすり抜けていってしまうのだろう。

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