拘束時間   〜 追憶の絆 〜
 すぐに返信が来るということは。やはり彼は約束通りに仕事を定時で終えて、私を待っていてくれたんだ......。

 私は彼に、より申し訳なく思った。

 罪悪感に苛まれながら。LINEに目を通すと、

 「分かった、お疲れ様。それなら俺も少し残る。沙綾の仕事が片付いたら教えて」

 「え?でも、そんなこと......」

 「沙綾は気にしなくて大丈夫だから。来週のプレゼンの内容を確認してるよ」

 来週のプレゼン ーー。

 それは、優斗が居る一課と私が居る二課で。それぞれ異なる企画を出し合い、有望な方を採用するというものだった。

 その企画こそ、優斗と浦田さんが仕事で勝負すると言っていた内容だった。

 結局、私の間抜けなミスで優斗を道ずれで残業させてしまい、ようやく私の仕事が片付いて彼にLINEを送ったのは午後7時半を過ぎていた。

 「お疲れ様!ごめんね!今、終わった!」

 「お疲れ様。じゃあ、俺も切り上げて、正面入り口で待ってる」

 私は資料をカバンへ乱雑に詰め込むと正面入り口まで走った。

 「沙綾〜っ、また急いで来たね??走って転んだりしたら危ないって言ったのに......」

 相変わらず。優斗は過保護に私を心配して叱ると、社内であるにもかかわらず。ごく自然に私の指先に自分の指先を絡ませてきた。

 「あっ、ちょっと......」
 
 手を繋いでいる様子を他の社員に見られないか私はハラハラしていたが、彼はいたって平然としていて。むしろ私達の交際を公にしたいという気さえ感じられた。

 「沙綾、俺達が付き合ってること。もう隠すのは無理だよ?何せ、あのスピーカーの浦田さんに宣言したんだからね。週明けには社内中に知れ渡ってるよ。きっと」

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