拘束時間   〜 追憶の絆 〜
 彼は息が上がり呼吸が乱れた声で、私の名前を呼んだ。

 私は自分がどんな表情をして、彼の呼びかけに振り返ったのか分からなかった。

 それよりも。これまでに見たこともないくらい、切ない表情をしている彼に、私は胸が潰れそうなほど締め付けられた。

 どうしてそんな顔をしているの?

 部屋に入って写真を勝手に見たのは、私の方なのに、

 私を叱らないの?

 隠し事をしていて後ろめたいから?

 ーー 本当の彼を知りたい。

  本当に、私のこと愛してくれてる??


 「”怜斗”って誰?」

 私から彼へ口をついて出た言葉。

 「”怜斗”は、俺の生まれついての名前だよ。」

 ......。

 何言ってるの?優斗。

 免許証見せてくれたよね......。

 私は、はっきりと。彼の免許証に『戸川 優斗』と、記載されているのをこの眼で見た。

 「......違うよ。あなたは優斗でしょ。免許証見せてくれたじゃんっ」

 「二十歳の時に改名したんだ......」

 「.......。じゃ......っ、じゃあ、隣に写ってる子は?私の知らない子でしょ?私の”初恋の優斗君”じゃないでしょ」

 私の問いかけに、彼は口ごもることなく答えた。

 「優斗は、俺の腹違いの弟だよ」

 ”そうだよ、俺は優斗だよ。隣に写ってるのは、沙綾の知らない子だよ。”そう、言って欲しかった......。

 私達が今まで一緒に過ごしてきた日々を、彼に全て肯定して欲しかった。

 「ごめん......」

 そっか。謝らなくちゃいけないことなんだ......。

 「優斗は、正妻の子で。俺は......、愛人の子だよ......」

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