真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
一度は、このしっとりとした黒革のソファの上で、めくるめく長い夜が幕を開けると思われた。しかし彼の誠意ある行動によって私達は、それからの時間、健全に寄り添いスクリーンに目を向けて過ごした。

それでも。甘いキスと、強い抱擁が止むことはなかった......。

恋物語は、真正の恋へのスパイス。エンドロールが流れ始める頃には再び、私達の間には熱っぽい空気が漂って、彼の息吹は腕の中にいる私の髪をそっと揺らしていた。

私は彼の方へ向き直り、穏やかに上下する胸板を見つめた。

彼の広い胸板は規則正しく一定間隔で呼吸を繰り返していて、その様子には少しの緊張や、動揺も見られない。彼は私を抱きしめることで、仕事や社会と向き合っている時に感じる緊張やプレッシャー......そういう切迫した感情を手放しているようだった。

「ん......」

私が胸に顔を埋めて”もぞもぞ”と、体を動かすと広務さんは漏らすように微かに呻いて私の背中をゆっくりと撫でた。

「ごめん。ちょっと、寝てた......」

鼻にかかった低い声で悪びれる彼は、この短時間の間に熟睡していたことを示していて、私は彼が相当に疲れていることが分かった。

こんなに疲れているのに、私の希望を優先して付き合ってくれた広務さん。私は、彼のことを思いやれなかった自分に嫌気が差した。今日のこともそうだけど、それ以外のことも......。

「出張帰りで疲れてるんだから、当たり前だよ。ごめんね......。もうちょっと、休む?」

「ううん、大丈夫。シャワー浴びて目醒ますよ。なんで、優花が謝るの?」

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