真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
私は俯き気味だった顔を上げて、彼の姿を瞳の真ん中に映した。

往来に紛れて足早に私のもとへ歩んで来る広務さんは、濃紺のスーツ姿に、右手でキャリーケースを引いて、左手にビジネスバッグを持って両手の塞がった余裕の無い出で立ちだった。

空港から直接、私に会いに来てくれたんだ......。

長いフライトで心身ともに疲労しているにもかかわらず、家に帰ることよりも先に彼が私に会うことを選んでくれたと思うと、私が彼の帰りを待つ数日間の間に起こした過ちが如何に重いものか痛感した。

しかし反比例するように、罪の意識で暗く淀んだ私の気持ちを清浄に戻すことも必要だと思った。

瞳の真ん中に映る広務さんは、出張帰りの疲れなど微塵も感じさせずに、生き生きと歩を進めている。

颯爽と歩く彼の後ろ背に広がった大空は見事な秋晴れの夕日だった。

距離が近づいてくるにつれ次第に大きくなっていく彼の姿と、紅々と燃えるような夕日を見つめていると、私はまるで時間が巻き戻っていくような感じがした。

今、彼と共に私の瞳に映っている秋晴れの夕焼けは、四日前、彼に会いたくてタクシーを空港まで走らせた時に見た情熱的な夕焼けと同じだった。

いつの間にか私は両手に重くかかえ込んでいた暗く淀んだ気持ちを手放していて、代わりに彼への切ないまでに焦がれる想いを胸いっぱいに満たしていた。 

抑えきれないほどの情熱に後押しされた私は、気がつけば走るには心許ない細いヒールのパンプスで、彼に向かって駆け出していた。

「優花っ!ハイヒールで走って、転んだりしたら危ないから、俺が行くまで待ってて!」

彼はビジネスバッグを大きく揺らしながら、左手で私を制止するような手振りを見せた。

それでも私は彼の制止を聞かずに、溢れる想いのままに疾走する。

やがて彼はキャリーケースから手を離し、ビジネスバックを道端に置いて、胸に飛び込んでくる私を迎い入れるために大きく両手を広げた。

「おかえりなさいっ!」

勢いよく彼の胸に飛び込んだ瞬間、私は胸が、ときめいて朝日のように輝いた。

「ただいま!」

広務さんは両腕に力強く私を抱きとめると、そのままギュッと私を抱きしめて頬にチュッとキスをくれた。

彼の温かくて柔らかな唇の感触を頬に覚えた時、私は愛しさで心がフワッと舞い上がった。

甘い”ときめき”を、ちりばめた潤んだ瞳で私が彼を見つめると、彼は両手で私の頬を優しく包み込んで瞳の奥をスーッと覗き込みながら言った。

「風邪は......、ひいてないね? 良かった。寂しかったんだよね? だから、優花は泣いてたんだよね? ごめんね......。でも、もう安心して、今夜はずっと一緒にいられるから」

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