真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
二度目に訪れた彼の部屋は、懐かしさにも似た安らぎに満ちた香りで私を迎えてくれた。 

玄関先を騒々しくさせながら、大荷物をリビングに運び込んだあと、彼はスーツから部屋着に着替えるため寝室に行った。

ちょうど二週間前。今、彼が着替えている寝室の、ベッドの中で私達は初めて抱き合い、そして私は彼の温かくて優しい胸に抱かれて涙を流した。

私が泣いたせいで、その夜、彼は私を最後まで抱くことが出来なかった。

あの時は、本当に申し訳なかった。でも、あの夜があったからこそ、私は長年かかえこんでいた負の感情を手放すことが出来た。

それなのに、私の心には今、新たな感情が巣食って......。

ほんの僅かな時間、私が魔が差した自分の心と対峙していると、着替えを終えた彼がリビングにやってきた。

すると、今までモヤモヤとしていた気持ちはどこへやら、私は部屋着姿の彼にすっかり魅了されてしまった。

「うん?なに?」

自分を、ぽーっと鑑賞している私を見て、彼は不思議そうに目を丸くした。

「ううん......、じゃあ、私、早速晩ごはん作るね」

「うん、ありがとう。......俺、後で優花のエプロン姿を見に、料理してるとこ襲いに行くから」

広務さんはそう言いながら、らしくないサディスティックな笑みを浮かべた。

「えっっ!?もう、何言ってんのー」 

見慣れない彼のSっぽい表情に女心を掴まれた私は内心、ドキドキしながらも平静を装い、大量の食材で溢れ返るマイバッグを持ってキッチンへ向かった。 

一人暮らしには広過ぎるダイニングキッチンは、殺風景なほど綺麗に片付いており、一度も使われた事がないような感じがした。

キッチンには塩や胡椒などの基本的な調味料すら無く、600ℓは、入ろうかという大容量の冷蔵庫には、野菜や肉魚などの生鮮品は一切なく、有名な高級デリバリーキッチンのサラダやオードブル、そして高級ワインとチーズが入っているだけだった。
 
閑散とした冷蔵庫の内部は、まさに彼の多忙さを物語っていた。

彼は仕事が忙しいし、男の人の一人暮らしって食生活が乱れがちなイメージだけど、やっぱり彼も例外ではなかったのね。

今日は、美味しくて栄養のあるものを食べてもらおう。

私は会社用のジャケットを脱いでカットソーの上から、さっき買ったエプロンをつけると、気合十分に腕まくりをして料理を始めた。

下ごしらえを終えて、今度は煮たり焼いたりとメインの調理に取り掛かろうとした時に、廊下から小さくキッチンに近づいてくる足音が聞こえた。

その足音は、次第に大きくなり、ついには真後ろに彼の気配を感じる。

まさか、本当に襲いに来たーー!?

未知の体験に恐怖するような、でも興奮するような、背徳的な好奇心で心臓が高鳴っていく。

身構えながら、それでも手を休めずに料理を続けていると、フライパンを揺すろうとした時に、ギュッと後ろから彼に抱きしめられた。

「もうっ、広務さ......っ、んっっ」

突然、抱きしめられて胸がキュンとした私は身をよじりながら、それでも彼に抗議をしようとして振り返った。その瞬間、甘いキスで唇を塞がれた。

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