終わりで始まる進化論~第一部~
だからなのか、羽柴の手には二つのタオルと二つのスポーツドリンクしか用意されていない。
残りの一つは闘技場の隅の控室の辺りで風を受けて一人ぼっちでヒラヒラなびいている。
パワハラで当たり散らすブラック企業と同罪だ、と声を大にして言えない分、ナツキは心の中で叫ぶ。
「た、確かに勝てては無いですけど、それなりに乗りこなせてきましたよ!」
三日前までは迷走という名の暴走を繰り返していたのだ。むしろ早い上達を褒めてほしい。
「計算上はシュタールアイゼンは白樺(しらかば)同様の力を発揮するのです。それが全戦全敗なんて、むしろどこを褒めろと言うんですか?そんなご高説(こうせつ)があるならば私も賜(たまわ)りたいものですね」
「いや、良いです。……すみませんでした」