空白の3日間
第一章 仕事の依頼
平成19年
8月17日 
午後9時 

蒸し暑い、8月の夜は、歩いているだけでも汗が流れ落ちるほどの時期である。
俺は、仕事を済ませ、職安通りから
小滝橋通りに入った百人町の交差点に
ある、古ぼけた屋台で生ビールを注文した。
店主は、物静かな
人で、無言のまま
生ビールを
カウンター越しから渡してきた。
音楽も流れて無く、口数の少ないマスターが、経営している屋台である。
この時期に飲む
ビールは、旨い。
仕事でのストレスが溜まった疲労を開放してくれる感覚を
得られる。

43歳 栗山浩二 清掃会社社長 
従業員3名

俺は、人の嫌がる
仕事で金儲け
している。
毎日、強烈な悪臭の部屋での仕事を
やっているから自宅に帰る前には、必ずこの屋台に立ち寄る。
嫌な部屋から付いてきた悪臭をビールで洗い流している。
例えて言うと、訳ありの部屋が多い為、自分の心身を清掃しているみたいなものである。
冷たいビールが、
一気に喉を通ると
まるで死人が生き
返るような気分だ。
「マスター、もう
一杯」

マスターは、冷えたジョッキーを冷蔵庫から取り出し、
サーバーでビールを注ぐ。
二杯目のビールを
飲もうとした時、
突然、着信音が
聞こえた。
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