野獣の食事
「なぁー、弘。お前からも言ってやれよ!」

晃は弘に、ウインクをしながら話しを振ってきた。

「………。」

どう言おうか迷っている弘。
頭の中では、これは間違いなく詐欺罪でー、裁判したらー…

等と、裁判所での仕事のように、刑法第何条かを思い浮かべている。

「…はぁー…ごめんな弘…。あんなやつのことの話しをしてしまって…そうだよなー…思い出したくないよなー、あんな過去。」

なんと、晃は涙混じりに弘に語りかけてくるではないか。

ここまで行ったら、さすがと言うしかない。

男も、そんな晃の様子を見て、すまなそうな顔をしてきた。

「…そうだったのか…悪かったなー…」

そう言うと、胸ポケットから名刺を取り出し、

「オレの連絡先だ。もし、やつに会うことができたら、連絡してくれ。きっと、弘君の仇も討ってくるから…」

ニンマリと晃は笑うと、

「わかった。確実に連絡するよ!」

騙しきりやがった!

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