王子様にかけるチョコの魔法
「それ、なぁに?」
気付いて。私の思いに。
「チョコ、食べる?」
大粒の雪が地面に静かに触れるような声で呟くと、彼は数秒黙り込みフッと息を漏らしてから手の平を見せる。
「食べるよ。ちょうだい。と、言うか…その言葉を8時間以上待ってた」
頬を赤く染め、苦笑いを浮かべ口元を隠す。
「いつも甘い物苦手って言っていたから、くれないかと思って落ち込んでいたんだよ。なんか、女々しくて馬鹿みたいだね」
「そ、そんな事ありません!もらってください」
バックから取り出して手の平にのせると、それにそっと口付けを落とす。
「これは、他の甘いものとは違って…特別に好きだよ。ありがとう」
「は、はい」
彼と過ごす特別な日は、私の魔法がかかる唯一の日になる。これからも、ずっと。
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