君恋し、いつもそばにいるから
勝手にドキドキしてやたらうるさい心音でどうかなったかと思うくらいで……
「 私、大丈夫… あなたのおかげで勇気が出たから 」
「 勇気?」
「 今から髪切ります、アイツが好きだって言ってた髪なんかいらないから 」
え、ええっ
「 マジで?」
「 マジです、じゃあ… 」
「 待った! 俺の姉貴の友達が美容師で店やってるからそこでいいなら 」
髪切るとか、失恋で?
初めて見るわ、そんな…… 切るとか……
彼女は頷いて、俺の姉貴の友達が経営する店、美容室・風詩。
「 あれ、いらっしゃい春賀君。彼女?」
「 違うし… 髪切りたいって言うから連れてきたんだけどいい?」
「 いいよ、春賀君の彼女なら大歓迎!」
「 だから違うっての!」
彼女はカルテを書いていて側で見ていた。
彼女の名前は沢渡 祐香。
俺は名前を聞かれて答えた。
「 竹内 春賀君… 」
「 そう 」
「 ありがとう、切って… そしたら一歩前進するから 」
祐香の切ない微笑み……
涙のあとが残る微笑み……
抱きしめてやりたいって思った。