Sweet break
『倉沢』

呼ばれて振り向くと、さっき出ていったはずの関君。

『明日って何かあるのか?』
『?』
『朝からやけに聞かれるから』

どうやら冗談ではなく本気で聞いている様子。
鈍いにも程がある。

『バレンタインだから…でしょう?』
『…なるほど』

流石に納得したらしく、次に何故か眉間に皺を寄せ、考え込む。

『…お前は』
『え?』
『俺にくれんの?』

聞かれて、一応総務課の女性達で用意したのを配る手筈にはなっていたので『あげる…けど』と答えると、ニヤリと笑い一歩私に近づくと、耳元で囁く。

『じゃそれだけ受け取るわ』
『!!』

咄嗟に逃げるように後ろに下がる。

『あ、関さんこんなとこにいたぁ』

ふいに入ってきたのは女性二人組。
手には小さな紙袋。

『明日、私達研修なので先に渡しちゃいますね』

こんなところで渡しちゃうくらいだから、皆にも配る義理チョコのようだけど、関君は丁重に受取りを拒否。

『悪い…今年は一人しか受け取らないことに決めたから』

めったに見せない笑顔を見せると、二人は瞬時にノックアウト。

関君の視線は、真っすぐそのまま後ろにいた私に注がれる。

ドキッ

何その瞳…本気?

今夜はチョコと格闘して眠れそうにない…。
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