私、今日からお金持ち目指します?
「上条勝利です。初めての方も、何度もお会いしている方も、真っさらの気持ちで今回の『富豪への道』を目指すセミナーを受講して下さい」

ゆっくりと会場を見渡し、私に気付くとギッと睨むように見る。ヒッ、怖い!

だが、すぐ視線を外し口角を上げる。そして、最後にあの彼女たちの前で視線を止めたかと思うと、ニッコリと微笑んだ。女性たちの瞳は明らかにハートマークだ。

うわぁ、アレが例の魅惑の微笑みだな、とさっきの冷たい視線とのギャップに驚く。

しかし、この対応の違いは何だ?

フロントでのあの呟き? それともカジュアルなこの格好?

彼女たちは見ただけで、バリバリのキャリアウーマンです、と分かるようなスーツとワンピースを着ている。おそらくブランド物だろう。いっぽうの私は、量販店の白いブラウスに空色のジャケットを羽織り、オフホワイトのパンツ姿。まるっきり普段着だ。

イヤ、それ以前に、歴然と違うこの見栄えか?

貧弱な私と違い、彼女たちはボンキュッボンのナイスボディに美しく化粧を施していた。十人男性がいれば、奇特な一人を除いて九人が彼女たちを好むだろう。ちなみに、奇特な一人とは我が父だ。父は母親譲りのベビーフェイスな私の顔が大好きなのだ。

そんなことを思っていると、隣の男性が「君、呼ばれているよ」と小さく顎で前方を指す。
< 11 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop