私、今日からお金持ち目指します?
ん? と視線を前に向け、再びヒッと息を飲む。
上条勝利がこちらを憮然と見つめていたからだ。

「はっはい!」と慌てて立ち上がると、「君は小学生か! 立たなくってもいい」座れと視線で椅子を指す。

……隣の男性もだが、上条勝利も、どうしてボディランゲージで会話を済ませようとするのだ?

その一挙手一投足が、くそっ、カッコイイじゃないか!

「君に一つ質問する。今日、君はどのような気持ちでここに来た?」

突然なんだ? 何と返事をすればいいのだ……?

「格好を付けなくてもいい、正直な気持ちを言ってくれ」

正直な気持ち……。

「親にいいようにされているなとか、高額なセミナー代だなとか、『富豪への道』って何だとか、詐欺みたいだなとか……でしょうか?」

「詐欺……」上条勝利は、最後の言葉で、一瞬、絶句する。
当然、上条勝利の反応に、会場が水を打ったように静まり返る。

「ほほう、君はそんなことを思ってこのセミナーに参加をしたのか」

ニッコリと笑ったが、眼が明らかに怒っている。
隣の男性が、青い顔でゴクンと唾を飲み込んだ。

……もしかしたら、私は非常に強力な地雷を踏んでしまったのだろうか?
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