君の思いに届くまで
14章
14章


イギリスから帰国してすぐ健から連絡が入った。

私がイギリスで琉と会えたのか心配していたらしい。

「そうか、結局会わなかったんだ」

健はなぜだかホッとしたような声で言った。

「会わない方がいいような気がしたの。会おうと思えば会えたんだけど、会ったらもっと苦しくなるような気がして」

私は軽くため息をついて、電話を持つ手を変える。

「もし、またどこかで出会えたらそれは運命だと思う」

「そんなことはありっこないわ。私がまたイギリスへ行くことがあれば0%じゃないけど、多分もうしばらくはいかない」

「わからないぞ。向こうが日本に来ることだってある。だって琉ってやつは日本人なんだろ?」

「まぁね。だけど、そんな期待持たせるようなこと言わないでよ」

そう言いながら、少し笑った。

きっと健の言う可能性は0に等しいから。

期待を持ったって叶うわけないと思っていた。

だけど、本当に健の言うように限りなく0に近いけれどその可能性は否定できない。

「そうだな。きっともう会わないよ。ヨウと琉ってやつとは」

「うん」

頷きながら本当は泣きそうだった。

こんなにも誰かを愛して、あきらめられない恋は初めてだから。

「健は、ずっとあきらめられない恋をしたことがある?」

涙に意識を向けたくなくて、冗談ぽく健に尋ねた。

「え、俺?」

笑って返すと思ったのに、妙に緊張した空気が電話の向こうに流れる。

健らしくもない。


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