君の思いに届くまで
私は自分の気持ちに蓋をして、時々学生達と談笑しながらその場をやり過ごしていた。

だんだんと薄暗くなっていく空を見つめながら、やるせない気持ちになっていく。

「そろそろ片付けに入ろうか」

琉は腕時計に目をやりながら学生達に伝えた。

「え~もう終わり?まだ食べれるのに~」

1人の女学生が頬を膨らませて不満げにつぶやく。

「まだ寝るまで時間はあるから、お酒とおつまみで語り合えばいいさ」

琉は笑いながらその女学生に声をかけた。

その優しい声と笑顔に胸が苦しくなる女性は今までどれくらいいたんだろう。

私だけの琉だと勝手に思い込んでいたことに今更ながら情けなくなる。

片付けが一通りすみ、私は皆から離れた場所で、夜の木々の薫りを吸い込みながら1人涼んでいた。

「ヨウ」

背後から琉の呼ぶ声が聞こえて、ゆっくりと振り返る。

「大丈夫?今日はいつもより元気がないように見えたけど」

「大丈夫です。ちょっと飲みすぎちゃったみたいです」

私は軽く笑いながら琉から視線を逸らした。

「そうか、ならいいんだけど。これから皆と夜の森を散歩しに行こうって話になったんだが、しんどくないならヨウも一緒に行かないか?」

琉とふたりなら、すぐに行くと答えただろう。

「ありがとうございます。今日は少し疲れたから先に休ませてもらってもいいですか?」

琉は残念そうに頷くと私の肩に手を置いて言った。

「わかった。残念だけどしょうがない。早めにゆっくり休んで」

「はい」

もうこれ以上、琉が女学生達と仲良く集っているのを見たくなかっただけ。

それに、いつ彩が琉に……ということを気にしている自分に耐えられなくなっていた。
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